高齢の方が「くちゃくちゃ」する原因と今日からできるやさしい対処法

高齢の家族が食事中にくちゃくちゃと音を立てると、介護する側も本人も気まずさや不安を感じます。まずは原因を探り、無理のない範囲で生活習慣や環境を整えることで改善が期待できます。次から紹介する対処法は家庭でできることが中心ですので、気軽に試してみてください。

老人がくちゃくちゃするのはなぜ まず試したい対処法

まずは生活の中でできる簡単な対応から始めましょう。原因がはっきりしない場合でも、口の清潔や食べ物の工夫、環境の調整で音や不快感を和らげられることが多いです。家族で少しずつ観察しながら取り入れてみてください。

口の中を清潔に保つ習慣をつける

口の中が汚れていると食べ物がまとわりつき、くちゃくちゃした音が出やすくなります。朝晩の歯みがきに加え、食後のうがいや口腔ケア用のシートで汚れを落とす習慣をつけると違いが出ます。

口腔保湿ジェルや唾液腺を刺激するガム（嚥下に問題がない場合）を活用するのも効果的です。入れ歯を使用している方は就寝前に外して洗浄し、定期的に歯科で点検してもらうと衛生面と機能面で安心です。

ご家族がケアを行う場合は、声かけを穏やかにして本人の尊厳を守ることが大切です。ケアの頻度や方法は本人の負担にならないよう調整しましょう。

食事の固さや形を見直して噛みやすくする

硬すぎる・大きすぎる食べ物は咀嚼や飲み込みに負担をかけます。食材を小さめに切る、やわらかく煮る、刻み食にするなどで噛みやすくなり、口の中での混ぜる動作が減って音も抑えられます。

粘り気のある食材はくちゃくちゃ音を誘発しやすいので、調理で水分を調整したり、あらかじめほぐしておくと食べやすくなります。味付けは薄めでも食べやすさを優先し、食感を揃えると飲み込みやすくなります。

食事を少量ずつ出す、ゆっくり休憩を入れるといった工夫も負担を減らす助けになります。見た目や盛り付けで食欲を保つことも忘れないでください。

入れ歯や歯科の状態を早めに確認する

入れ歯の不具合や歯の痛みは、無意識の口の動きや咀嚼音の原因になります。違和感や痛みを訴える場合は早めに歯科受診を勧めてください。入れ歯の調整や新しい義歯で噛みやすさが改善することがあります。

歯科では噛み合わせの確認や入れ歯の適合、口腔内の炎症チェックをしてもらえます。通院が難しい場合は往診対応の歯科を探すと負担が少なく済みます。家族で観察した変化はメモして伝えると診療がスムーズです。

薬や体調の変化は家族で共有する

処方薬や体調の変化で口の乾きや咀嚼力が変わることがあります。服薬が始まった、量が変わった、体調不良が続くなどの変化があれば家族で情報を共有しましょう。

薬の副作用で唾液が減る場合は、担当医に相談して代替薬を検討したり、口腔ケアで補う方法を相談します。体調の変化は食事や水分摂取にも影響するため、食べ方や介助方法の見直しが必要になることもあります。

日常の観察記録を残すと医師やケアスタッフとの連携が取りやすくなります。些細に思える変化も共有すると良いです。

傷つけない伝え方で気持ちを保つ

本人に直接「やめてほしい」と伝えると気持ちが傷つく場合があります。穏やかに声をかけ、替わりの方法を提案する形で伝えると受け入れやすくなります。

たとえば「少し休憩してお茶を飲みましょうか」と声をかけるなど、行動に誘導する言葉を使うと否定されている感覚が減ります。家族が協力して雰囲気を落ち着けることも大切です。

相手の自尊心を大切にしながら、環境や習慣を変えていく姿勢を心がけてください。

なぜ老人はくちゃくちゃと音を立てるのか

音の原因はひとつではなく、複数の要素が重なっていることが多いです。まずは観察して、どの要因が強いかを見極めることで対策が見えてきます。次に考えられる主な理由を挙げます。

噛む力や口の筋力が衰えている

年齢とともに咀嚼筋や口周りの筋力が弱くなり、うまく食べ物を押しつぶせなくなります。結果として口の中で食べ物を動かす回数が増え、くちゃくちゃした音が出やすくなります。

筋力低下は飲み込みの遅さやむせにもつながるため、口周りの軽い運動や食べやすい食事形態で負担を減らすことが重要です。家族が様子を見守り、ゆっくりとした食事のペースを保つ支援が役立ちます。

唾液が減り口が乾きやすい

唾液が少ないと食べ物が滑りにくくなり、唾液を混ぜようと余分に口を動かすことがあります。これが音の原因になることが多いです。

脱水や薬の影響で唾液量が減ることがあるため、こまめな水分補給や唾液分泌を促す食べ物、口腔保湿剤の使用を検討してください。軽い刺激で唾液が出る場合もありますので、状況に合わせて工夫しましょう。

合わない入れ歯や歯の不具合

入れ歯が合わないと噛み合わせが不安定になり、食べ物を口の中で移動させる動作が増えます。歯が欠けていたり痛みがある場合も同様です。

歯科での調整や修理、場合によっては入れ歯の作り直しで改善します。痛みや違和感は本人が言い出しにくいこともあるため、家族が注意深く観察して歯科受診を促してください。

薬の副作用や脳の変化で無意識に動く

特定の薬は口の動きや唾液量に影響を与えることがあります。また、加齢や脳の変化で無意識に口を動かすことが増える例もあります。

薬の影響が疑われる場合は処方医に相談し、調整や代替薬の検討をお願いしてください。神経系の変化は専門医と連携して評価すると安心です。

鼻づまりで口呼吸になっている

慢性的な鼻づまりがあると口呼吸になりやすく、口の中が乾燥して食べ方に影響します。口呼吸は唾液の分布を変え、食べ物をうまくまとめられなくなることがあります。

耳鼻科で原因を診てもらい、治療や対処法を検討してください。鼻の通りがよくなるだけで食事のしやすさが改善することがあります。

認知症などで口の動きが変わることがある

認知症では咀嚼や飲み込みのタイミングがずれたり、無意味な口の動きが出ることがあります。手の動きや視線と連動している場合も多いです。

認知症の進行具合によって対応が変わるため、主治医やケアマネジャーと相談しながら環境調整や食事方法を考えていくと安心です。

食べていないのに口をもぐもぐする場合の原因

食事をしていないのに口をもぐもぐする場合は、唾液過多や薬の副作用、神経症状が関係していることがあります。また、緊張や習慣から無意識に動いていることもあります。

気になる頻度や状況を記録して医師に伝えると診断が早くなります。家庭では気持ちを落ち着ける工夫や唇や口周りをやさしく触れるなどの対応が役立つことがあります。

家庭でできる毎日のケアと工夫

日々のちょっとした配慮で食事中の不快な音が減り、本人も周囲も安心して食事ができます。無理せず続けられる方法を中心に紹介します。

毎日の歯みがきとうがいを習慣にする

朝晩の歯みがきに食後のうがいを加えると、食べかすやバイ菌が減り口の中がさっぱりします。歯ブラシが届きにくい場合は口腔ケアシートやスポンジブラシを使うとやさしく清掃できます。

入れ歯は毎回外して洗浄し、就寝時は外す習慣をつけると炎症予防になります。家族が手伝う場合は声がけを穏やかにして、本人のペースを尊重してください。

水分補給や唾液を増やす食品の工夫

こまめな水分補給は口の乾きを防ぎます。飲み込みやすいとろみをつけた飲み物や、寒天やゼリーなど飲み込みやすい形態にすることも有効です。

唾液分泌を促す食品としては酸味のある果物や梅干し、柑橘類が挙げられます。ただし酸が強すぎる場合や歯に不安がある場合は量を調整してください。無理なく続けられる工夫を探しましょう。

口周りをやさしく動かす簡単運動

口を軽く閉じたり開いたり、唇をすぼめて吐く呼吸練習など、短時間でできる運動を毎日取り入れると筋力維持に役立ちます。痛みや疲れが出たら無理をしないでください。

家族が一緒に行うと習慣化しやすく、楽しく続けられます。回数は少しずつ増やす程度で構いません。継続が大切です。

噛みやすい食材と調理法の例

やわらかく煮込む、細かく刻む、ミンチにする、片栗粉などでとろみを付けると噛む回数が減ります。繊維が細かい魚や豆腐、煮野菜は食べやすい素材です。

味や彩りを工夫して食欲を保つことも大切です。食感が均一になるように調理し、食べる人に合わせた硬さに調整してください。

食事中は集中できる環境を作る

テレビや大きな音があると飲み込みのタイミングがずれることがあります。静かで落ち着いた場所、適切な照明で食事に集中できる環境を整えると安全に食べられます。

また、声かけは短く穏やかに行い、早食いや無理な飲み込みを防ぐよう促してください。休憩を挟むことも有効です。

使いやすい食器やカトラリーを選ぶ

滑りにくい食器や持ちやすいスプーン、深めの皿などを使うと食べやすくなります。取り分けしやすい小分け皿や転倒しにくいコップも役立ちます。

本人の手の力や動きに合わせた道具を選ぶと、自立度が保たれて自信につながります。試しながら最適な道具を見つけてください。

受診のタイミングと相談先の選び方

家庭での対応で改善が見られない場合や、むせ、体重減少、痛みなどがある場合は医療機関への相談が必要です。適切な専門家に繋ぐことで原因解明と治療につながります。

受診を検討したほうがよい症状の例

以下のような場合は早めに受診を検討してください。

• 食事中のむせや咳が増えた
• 体重が減少している
• 食べる量が急に減った
• 飲み込みに時間がかかる、声がかすれる

これらは誤嚥や栄養不良のリスクを示すことがあるため、専門的な評価が重要です。

まずは歯科かかかりつけ医に相談する

口腔内の問題や入れ歯の不具合が疑われるときは歯科を受診してください。全身状態や薬の影響が心配な場合はまずかかりつけ医に相談すると、必要な専門科への紹介がスムーズです。

かかりつけ医は全体のバランスを見て次の受診先を判断してくれます。事前に気になる点をメモしておくと診察が効率的です。

耳鼻科や神経内科を受診するケース

鼻づまりや副鼻腔の問題がある場合は耳鼻科、認知機能や神経症状が疑われる場合は神経内科の受診が適切です。嚥下機能の専門外来がある施設もありますので、紹介を受けると詳しい検査が受けられます。

専門科では検査やリハビリ、投薬による改善策を提案してもらえます。症状に応じた部門を選んでください。

受診時に伝えると診断が早くなること

医師に伝えるとよい情報は次の通りです。

• 症状が始まった時期と頻度
• どのような食材や状況で出やすいか
• 使用している薬や既往症
• 最近の体重変化や食事量の変化

これらをメモして持参すると診察と検査の判断が早くなります。

医療と介護で連携する進め方

受診結果をもとに、かかりつけ医、歯科、ケアマネジャー、訪問看護などで連携を図ると安心です。介護サービスの利用やリハビリが必要と判断されれば調整していきます。

家族は変化を共有し、支援計画に参加することで日常ケアが一貫して行えるようになります。情報を記録しておくと連携がスムーズです。

穏やかな食事を続けるための小さな工夫

毎日のちょっとした配慮が、本人の食事時間を楽しく安全なものにします。無理なく続けられる方法をいくつか組み合わせて、家族で見守りながら食事を支えていきましょう。