成年後見制度を使い始めたあとに、本人や家族が「思ったより自由が少ない」「後見人との相性が合わない」「費用の負担が重い」と感じることはあります。ただし、成年後見制度は契約サービスのように、本人や家族の希望だけですぐ解約できる制度ではありません。
大切なのは、やめたい理由が「制度そのものを終わらせたい」のか、「今の後見人を変えたい」のか、「支援の内容を軽くしたい」のかを分けて考えることです。この記事では、成年後見制度をやめたいときに確認すべき条件、家庭裁判所で検討される手続き、失敗しやすい判断を整理します。
成年後見制度をやめたいときの答え
成年後見制度は、一度始まると本人や家族の都合だけで自由にやめることはできません。特に法定後見では、家庭裁判所が本人の判断能力や生活状況を確認し、制度を続ける必要があるかどうかを判断します。そのため、「本人が嫌がっている」「家族が管理したい」「後見人への報酬が負担」という理由だけでは、制度そのものの終了が認められるとは限りません。
ただし、まったく方法がないわけではありません。本人の判断能力が回復している場合は、医師の診断書などをもとに「後見開始の審判の取消し」を申し立てる流れがあります。また、問題が制度ではなく後見人との相性や対応にある場合は、後見人の辞任、解任、交代、追加選任などを検討することになります。
まずは、次のように「やめたい」の中身を分けてください。
| やめたい理由 | 考えるべき方向 | 確認する相手 |
|---|---|---|
| 本人の判断能力が回復した | 後見開始の審判の取消し | 医師、家庭裁判所 |
| 後見人と合わない | 後見人の交代、追加、解任の相談 | 家庭裁判所、専門職 |
| 費用が重い | 報酬付与、助成制度、支出内容の確認 | 家庭裁判所、市区町村 |
| 家族で財産管理したい | 制度終了ではなく運用方法の見直し | 後見人、家庭裁判所 |
| 本人が亡くなった | 後見事務の終了報告と財産引継ぎ | 家庭裁判所、相続人 |
つまり、最初にすべきことは「制度をやめられるか」をいきなり調べることではなく、困っている原因を正確に言葉にすることです。原因を取り違えると、本来は後見人変更で済む話を制度終了の話として進めてしまい、時間も精神的な負担も増えてしまいます。
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まず確認したい制度の前提
法定後見は自由に解約できない
成年後見制度のうち、家庭裁判所が選んだ成年後見人、保佐人、補助人が本人を支援する仕組みを法定後見といいます。法定後見は、本人の財産や契約を守るための制度なので、本人や家族が「もう不要」と感じただけで終了するものではありません。本人が不利な契約を結んだり、預貯金や不動産を不適切に使われたりするリスクが残っているなら、家庭裁判所は制度を続ける必要があると見る可能性があります。
ここで誤解しやすいのは、「家族がしっかり見られるなら制度をやめられるはず」と考えてしまう点です。成年後見制度では、家族の気持ちだけでなく、本人の判断能力、財産の内容、生活上の契約、相続や不動産売却の予定、過去の金銭管理の状況などが見られます。家族が善意であっても、本人の保護が必要と判断されれば、制度は続くことになります。
また、後見人が専門職の場合、報酬や連絡のしにくさから不満が出ることもあります。しかし、その不満は制度終了の理由ではなく、後見人との情報共有、報告方法、役割分担の見直しで改善できる場合があります。まずは「制度が不要になった」のか、「今の運用に不満がある」のかを分けて考えることが重要です。
任意後見との違いにも注意
成年後見制度には、法定後見のほかに任意後見があります。任意後見は、本人が判断能力のあるうちに、将来支援してもらう人を契約で決めておく制度です。ただし、任意後見もいったん任意後見監督人が選ばれて制度が動き始めると、単なる契約解除のように自由に終わらせられるわけではありません。本人保護の観点から、家庭裁判所の関与が続くためです。
任意後見の場合は、契約内容、任意後見人との関係、任意後見監督人の有無によって整理の仕方が変わります。まだ任意後見監督人が選ばれる前なら契約の解除を検討できる場合がありますが、制度が開始した後は、本人の判断能力や支援の必要性を踏まえて判断されます。法定後見と任意後見を混同すると、必要な手続きや相談先を間違えやすくなります。
この記事で主に扱うのは、すでに家庭裁判所を通じて後見人などがついているケースです。本人の預金管理、施設入所契約、介護サービス契約、不動産の管理、相続関係の手続きなどが後見人の関与で進んでいる場合、急に制度を止めようとすると生活や支払いに支障が出ることがあります。だからこそ、感情的に動く前に制度の種類と現在の状況を確認する必要があります。
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やめられる可能性があるケース
判断能力が回復した場合
成年後見制度そのものを終わらせる代表的なケースは、本人の判断能力が回復し、後見や保佐、補助の必要がなくなった場合です。たとえば、一時的な病気や事故の影響で判断能力が低下していたものの、治療やリハビリによって契約や財産管理を自分で判断できる状態に戻ったようなケースです。この場合は、医師の診断書などを用意し、家庭裁判所へ後見開始の審判の取消しを申し立てることを検討します。
ただし、本人が「自分でできる」と言っているだけでは足りないことが多いです。家庭裁判所は、診断書、本人の生活状況、預貯金や年金の管理、介護サービスや施設契約の理解、周囲の支援体制などを総合的に見ます。日常会話がしっかりしていることと、重要な財産管理や契約判断ができることは同じではないため、この違いを意識しておく必要があります。
取消しを考えるなら、まず主治医に現在の判断能力について相談し、診断書を作成してもらえるか確認します。あわせて、本人がどの程度お金の出入りを理解できているか、通帳や年金、医療費、施設費、税金などを自分で把握できるかを整理しておくと、家庭裁判所への相談がしやすくなります。回復の見込みがある段階では、すぐに申し立てるより、資料を整えてから動くほうが現実的です。
本人が亡くなった場合
本人が亡くなった場合、成年後見人の仕事は終了します。ただし、死亡したからといって何もしなくてよいわけではありません。後見人は、本人の死亡を家庭裁判所へ報告し、それまで管理していた財産について計算を行い、相続人などへ引き継ぐ必要があります。預貯金、現金、保険、年金、施設利用料、医療費の未払いなどを整理するため、一定の事務が残ります。
家族側で注意したいのは、後見人がついていた本人の口座や財産を、相続人だからといってすぐ自由に動かそうとしないことです。後見人が管理していた財産は、終了時の報告や引継ぎの対象になります。通帳、印鑑、現金、領収書、介護施設からの請求書、葬儀費用の扱いなどは、後見人や家庭裁判所の指示を確認しながら進める必要があります。
また、本人の死亡後は成年後見の話から相続の話へ移ります。相続人が複数いる場合、財産の引継ぎや葬儀費用の支払いで意見が分かれることもあります。後見人が専門職であれば、後見事務の終了報告と相続手続きは別物として扱われるため、相続放棄や遺産分割が関係する場合は、早めに専門家へ相談したほうが安全です。
後見類型を変える場合
本人の状態によっては、「成年後見を完全にやめる」のではなく、後見から保佐、保佐から補助のように支援の重さを見直す方向が考えられる場合があります。後見は本人の判断能力がかなり低下している場合に使われることが多く、保佐や補助は本人が一部の判断を自分でできる場合に使われます。状態が変化したなら、制度の種類を見直す余地があります。
ただし、この場合も本人や家族が勝手に切り替えられるわけではありません。家庭裁判所の手続きが必要で、医師の診断書や本人の生活状況が重要になります。たとえば、日常の買い物や通院の判断はできるが、不動産売却や高額な契約は難しいという場合、全部を後見人が管理するより、必要な範囲を限定するほうが本人の意思を尊重しやすくなることがあります。
一方で、支援を軽くしすぎると、訪問販売、不要なリフォーム契約、親族間の金銭トラブル、施設費の支払い遅れなどが起きる可能性もあります。本人の自由を広げたい気持ちと、生活を守る必要性の両方を見て判断することが大切です。制度の種類を変えるかどうかは、本人の希望だけでなく、実際の契約判断や財産管理の力をもとに考えてください。
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後見人を変えたい場合の考え方
やめたい理由を切り分ける
成年後見制度をやめたいと感じる人の中には、実際には「今の後見人を変えたい」と感じているケースが少なくありません。連絡が遅い、説明が少ない、本人の希望を聞いてくれない、家族に相談せずに決められているように感じるなど、後見人との関係が原因になっている場合です。この場合、制度そのものを終わらせるより、後見人の対応改善や交代を考えるほうが現実的です。
まずは、何が不満なのかを具体的に整理してください。「冷たい」「合わない」だけでは家庭裁判所に伝わりにくいですが、「施設費の支払いについて説明がない」「本人の生活費の使い道を相談しても返答がない」「必要な医療費の支払いが遅れた」など、日時や内容を整理すると相談しやすくなります。感情ではなく、本人の生活や財産管理にどんな支障が出ているかを示すことが大切です。
一方で、後見人には本人の財産を守る義務があります。そのため、家族が希望する支出でも、本人の利益にならないと判断されれば認められないことがあります。たとえば、親族への多額の贈与、本人が使わない住宅の修繕費、相続対策を目的にした支出などは、家族の希望どおりにならないことがあります。不満の原因が後見人の問題なのか、制度上できないことなのかを分けて考えましょう。
辞任と解任は意味が違う
後見人を変える方法として、辞任と解任があります。辞任は、後見人自身が病気、高齢、遠方への転居、仕事上の事情などで後見事務を続けることが難しくなり、家庭裁判所の許可を得て任務を退くものです。後見人が自分の意思で申し出る手続きなので、家族が一方的に「辞任してほしい」と言っても、そのまま進むとは限りません。
解任は、後見人に不正行為、著しい不適任、本人の財産を害する行為などがある場合に検討されます。たとえば、本人の預金を私的に使った、必要な支払いを長く放置した、家庭裁判所への報告を怠った、本人の生活を明らかに損なう対応をしたといった事情です。ただし、単に相性が悪い、説明が少ない、家族の希望と違う判断をしたというだけでは、解任まで認められるとは限りません。
次の表で、制度終了、辞任、解任、交代の違いを整理しておきます。
| 手続き | 主な場面 | ポイント |
|---|---|---|
| 後見開始の審判の取消し | 本人の判断能力が回復した | 医師の診断書や生活状況が重要 |
| 後見人の辞任 | 後見人が続けられない | 家庭裁判所の許可が必要 |
| 後見人の解任 | 不正や重大な問題がある | 具体的な事実と資料が必要 |
| 後見人の追加や交代 | 支援体制を変えたい | 本人の利益になる理由が必要 |
後見人を変えたい場合は、家庭裁判所へ感情的に訴えるより、問題の内容を記録して相談することが重要です。電話や面談の日時、説明された内容、支払いの遅れ、本人の生活への影響、家族が求めた対応と返答をメモしておくと、状況を客観的に伝えやすくなります。
費用や自由度で悩むとき
後見人報酬の負担を確認する
成年後見制度をやめたい理由として、専門職後見人への報酬が重いという悩みがあります。後見人報酬は家庭裁判所が決めるもので、本人の財産から支払われるのが基本です。家族が直接支払うものではないとしても、本人の年金や預貯金が減っていくのを見ると、不安になるのは自然なことです。
ただし、報酬が負担だからといって、すぐ制度終了につながるわけではありません。制度は本人の財産や生活を守るために続いているため、費用だけを理由にやめることは難しいと考えたほうがよいです。まずは、後見人報酬がいつ、どのように決められているのか、本人の財産状況と照らしてどの程度の負担なのかを確認しましょう。
市区町村によっては、成年後見制度利用支援事業などにより、申立費用や後見人報酬の助成を受けられる場合があります。生活保護を受けている人、資産や収入が少ない人、親族による支援が難しい人などは、自治体の高齢福祉課、障がい福祉課、地域包括支援センターに相談する価値があります。費用が理由で不安な場合は、制度終了より先に助成制度の有無を確認してください。
本人の自由が減ったと感じる場合
成年後見制度が始まると、本人のお金の使い方や契約に後見人が関わるため、本人や家族が「自由がなくなった」と感じることがあります。特に、本人が以前のように大きな買い物をしたい、家族にお金を渡したい、自宅を処分したい、施設を変えたいと希望している場合、後見人が慎重な判断をすることがあります。これは意地悪ではなく、本人の利益を守るための役割です。
ただし、本人の希望がすべて無視されてよいわけではありません。成年後見制度では、本人の意思をできる限り尊重することも大切です。旅行、趣味、衣服、家電、外食、日用品、医療や介護の選択など、本人の生活の質に関わる支出については、本人の希望、財産状況、今後の生活費を踏まえて相談する余地があります。
自由度で悩む場合は、「何をしたいのか」「いくら必要なのか」「本人の生活にどう役立つのか」を具体的に後見人へ伝えましょう。たとえば「本人が孫に会うために年1回の交通費を使いたい」「施設の部屋で使うテレビを買いたい」「長年通った美容室に行きたい」のように、本人の生活に直結する希望は、単なる浪費とは違います。感情的に制度を否定するより、本人の希望を実現する相談に変えるほうが前に進みやすくなります。
避けたい判断と失敗例
勝手に財産を動かさない
成年後見制度をやめたい気持ちが強くなると、家族が通帳を預かる、本人の口座からお金を引き出す、後見人を通さずに契約を進めるといった行動を取りたくなることがあります。しかし、これはトラブルの原因になります。後見人が管理している財産は、本人のために使うべきものであり、家族の判断だけで動かすと、後から説明を求められる可能性があります。
特に注意したいのは、不動産売却、施設入所契約、介護サービス契約、保険解約、預貯金の大きな移動、親族への貸付や贈与です。これらは本人の生活や財産に大きく関わるため、後見人や家庭裁判所の関与が必要になることがあります。家族がよかれと思って進めても、本人の利益に反すると判断されれば、問題になるおそれがあります。
また、後見人への不満から連絡を無視したり、必要書類を渡さなかったりするのも避けたほうがよいです。年金、介護保険料、医療費、施設費、税金などの支払いに影響が出ると、結果的に本人が困ります。制度を見直したい場合でも、現在の支払いと生活維持は止めずに、記録を取りながら相談する形にしてください。
古い情報や体験談だけで動かない
成年後見制度について調べると、「簡単にやめられた」「後見人をすぐ変えられた」「家族が管理できるようになった」といった体験談を見かけることがあります。しかし、成年後見は本人の状態、財産の内容、家族関係、後見人の種類、家庭裁判所の判断によって結論が変わります。別の家庭で起きたことが、そのまま自分のケースに当てはまるとは限りません。
また、制度に関する情報は時期や地域によって運用の説明が変わることがあります。家庭裁判所の書式、必要書類、市区町村の助成制度、相談窓口の名称などは、最新の案内を確認する必要があります。昔のブログや掲示板の情報だけを信じて申立てを進めると、必要な診断書や資料が足りず、手続きが長引くことがあります。
体験談は気持ちを整理する参考にはなりますが、行動の根拠にするなら、家庭裁判所、地域包括支援センター、社会福祉協議会、弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門的な窓口で確認することが大切です。特に、本人の財産が多い、不動産がある、相続人同士の関係が悪い、後見人に不正の疑いがある場合は、早めに専門家へ相談したほうが安全です。
次に取るべき行動
成年後見制度をやめたいと感じたら、最初に「制度を終わらせたい理由」を紙に書き出してください。本人の判断能力が回復したのか、後見人との関係に不満があるのか、費用が不安なのか、本人の自由を広げたいのかで、進むべき道は変わります。ここを分けずに家庭裁判所へ相談すると、伝えたいことがぼやけてしまいます。
次に、本人の現在の状態を整理します。医師の診断、日常生活でできること、預金や年金の管理状況、施設や介護サービスの契約内容、本人が希望している生活、家族が困っている具体的な場面をまとめてください。後見人への不満がある場合は、感情ではなく、日時、やり取り、支障が出た内容、本人への影響を記録します。
そのうえで、次の順番で相談すると動きやすくなります。
- 制度終了を考える場合は、主治医に判断能力の回復について相談する
- 後見人との関係に悩む場合は、家庭裁判所へ具体的な事情を伝える
- 費用が不安な場合は、市区町村や地域包括支援センターに助成制度を確認する
- 不正や財産トラブルが疑われる場合は、弁護士や司法書士に相談する
- 本人の生活の希望がある場合は、金額と目的を整理して後見人へ伝える
成年後見制度は、始めると不便に感じる場面もありますが、本来は本人の生活と財産を守るための制度です。やめたい気持ちがあるときほど、「制度をなくすこと」だけにこだわらず、本人にとって何が困っているのか、どの支援を残し、どこを変えればよいのかを落ち着いて考えることが大切です。判断能力の回復があるなら取消しを検討し、後見人との問題なら交代や運用見直しを相談し、費用の問題なら助成や報酬の確認を進めることで、現実的な解決策が見つかりやすくなります。
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