財産調査とは何か？相続で押さえておきたい基本と進め方を解説

財産調査とは何か基本を分かりやすく解説

財産調査は、老後や終活、相続を考えるうえで大切な準備の一つです。家族や自分の安心のために、まずはその基本を押さえておきましょう。

財産調査の目的と重要性

財産調査とは、自分や家族が持っている財産を正確に把握するための作業です。主な目的は、将来の相続や遺産分割の際にトラブルを未然に防ぐことや、家族が困らずに手続きを進められるようにすることです。

たとえば、財産の内容が不明確なままだと、相続人同士での話し合いが難航したり、望まないトラブルが起きたりすることがあります。調査を行うことで、資産や借金の全体像を明らかにし、家族みんなで納得して分け方を決められるようになります。

終活や介護を考えるタイミングで財産調査を進めておくと、もしもの時に家族が慌てずに済みます。このため、元気なうちから定期的に見直しておくことが大切です。

調査を始めるタイミングと期限の目安

財産調査を始めるおすすめのタイミングは、本人や家族が元気でしっかり話し合える時期です。特に、認知症が進む前や、大きな病気の心配が出てきたとき、終活を意識するようになった時が目安となります。

相続発生後の場合は、相続開始日から3か月以内に相続放棄や限定承認などの重要な手続きを判断しなければなりません。この間に財産調査を終える必要があるため、早めに取りかかることが重要です。

また、日常的に家計を見直すタイミングや、家族との話し合いの場を持つことも、調査開始のきっかけとしておすすめです。

調査しない場合に起こりうるリスク

財産調査を行わずにいると、後々思いがけないトラブルが発生することがあります。たとえば、知らなかった借金が見つかり、相続人が困ることもあります。

さらに、各相続人が持つ財産の認識が異なっていると、分割協議で不信感が生まれる可能性もあります。これにより家族関係が悪化し、長引く争いに発展するリスクがあります。

財産調査をしっかり行うことで、こうしたリスクを減らし、家族が安心して相続手続きを進めることができます。

財産調査で対象となる主な財産の種類

財産調査の際には、見落としやすいものも含めて、幅広く財産を確認する必要があります。どのような種類があるかしっかり押さえておきましょう。

預貯金不動産有価証券などのプラス財産

プラス財産とは、相続や遺産分割の際に受け取ることのできる財産のことです。主なものとしては、預貯金、不動産、有価証券（株や投資信託など）があります。

たとえば預貯金は、複数の銀行や郵便局に口座が分散している場合も多く、すべてを一覧にして把握することが重要です。不動産は自宅だけでなく、貸している土地や空き家、地方の田畑も含めて調査しましょう。有価証券は証券会社の口座や、株式の名義書換状況も確認が必要です。

このようなプラス財産は、家族が把握していない場合が多いため、一覧表を作成して明確にしておくと手続きがスムーズになります。

借金ローン保証債務などマイナス財産

マイナス財産は、相続時に残された人が引き継ぐ義務がある借金やローンなどです。主な内容は以下の通りです。

• 消費者金融や銀行からの借り入れ
• 住宅ローンや車のローン
• クレジットカードの未払金
• 家族や知人の保証人になっている場合の保証債務

これらの情報は、通帳や契約書、請求書などから確認します。借金の存在を知らないまま相続すると、思わぬ負担を抱えることがあります。見逃さないよう、しっかり調査しましょう。

動産やその他の見落としやすい財産

動産とは、家財道具や車、貴金属、骨董品など、動かせる財産を指します。また、見落としやすい財産としては、次のようなものがあります。

• 宝石や美術品
• ゴルフ会員権
• 小規模な生命保険や共済
• ポイントやマイル、電子マネー

これらは現金や預貯金と違い、書類や目に見える形で管理されていないことも多いです。タンスや金庫、引き出しなども確認しながら、リストアップしておくと安心です。

財産調査の具体的な進め方とポイント

財産調査は、計画的に進めることで負担が軽くなります。自分で行う方法から専門家への依頼まで、ポイントを押さえて進めていきましょう。

自分でできる財産調査のステップ

自分で財産調査を始める際、以下のステップに沿って進めるとわかりやすいです。

1. 資産・負債のリストアップ
2. 通帳や契約書類の整理
3. 不明な点は家族と情報共有
4. 必要があれば金融機関などに問い合わせ

最初に、思いつく範囲で預金口座や借入先、所有する不動産などを書き出します。その後、通帳や証券、ローンの契約書などを集めて確認しましょう。わからないことがあれば、家族や関係者と話し合って情報を集めます。金融機関や証券会社に直接問い合わせて、残高証明や取引履歴を確認するのも有効です。

調査の際は、書類やメモをまとめて保管し、後から見直せるようにしておくことも大切です。

財産目録の作り方と保管方法

財産目録とは、所有する財産や負債を一覧表にまとめたものです。簡単な表を作るだけでも、全体像がわかりやすくなります。

種類	内容例	備考
預金	○○銀行普通預金	口座番号記載
不動産	自宅・土地	登記簿番号
借金	○○銀行住宅ローン	残高明記

このように、種類ごとに書き出して必要な情報を記入します。目録はパソコンや手書きで作成し、紙の場合は家族が知っている場所に保管しましょう。デジタルデータはパスワード管理を行い、万が一の際には家族がすぐに確認できるよう伝えておくことが大切です。

専門家に依頼した場合の費用と選び方

財産調査を専門家に依頼することで、より正確で安心な調査が可能です。主に依頼できるのは、司法書士、行政書士、弁護士、税理士などです。

費用の一例をまとめると次のようになります。

専門家	依頼費用の目安	特徴
司法書士	5万円～10万円程度	登記や調査が得意
弁護士	10万円～30万円程度	トラブル時に対応可能
税理士	5万円～15万円程度	相続税調査や申告が得意

専門家を選ぶ際は、費用だけでなく、実績や対応の丁寧さ、相談しやすさを重視しましょう。複数の専門家に見積もりを取り、比較検討することも安心へとつながります。

財産調査後に必要な手続きと注意点

財産調査が終わったら、次の手続きへの流れを確認しておきましょう。スムーズな相続や家族の安心のために、各ポイントを押さえておくことが大切です。

財産目録をもとに遺産分割協議を進める方法

財産目録が完成したら、相続人全員で集まり、遺産分割協議を行います。協議の際は、公平な話し合いを心がけ、全員の合意を得ることが重要です。

分割方法には、現物分割（実物ごとに分ける）、換価分割（売却して現金で分ける）、代償分割（ある相続人が他の相続人にお金を支払う）などがあり、家庭の状況や希望に合わせて選択します。協議内容がまとまったら、遺産分割協議書を作成し、全員で署名押印して保管しましょう。

協議がうまく進まない場合や意見が分かれる場合は、専門家や第三者機関に相談することも考えてみてください。

相続税申告や相続放棄の判断ポイント

財産調査の結果、相続税申告が必要かどうかの判断も重要です。基礎控除額を超える場合は、相続開始から10か月以内に申告と納税が必要です。

また、マイナス財産（借金）が多い場合など、相続放棄や限定承認などの手続きも検討します。これらは相続開始から3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があるため、早めに判断することが大切です。

申告や放棄について不安がある場合は、税理士や司法書士などの専門家に相談し、正しい手続きを進めましょう。

財産調査をスムーズに行うための事前準備

事前に準備しておくことで、財産調査はよりスムーズに進みます。以下の点を意識しましょう。

• 日ごろから通帳や契約書類を一箇所にまとめておく
• 定期的に財産内容を見直し、リストを更新する
• 家族と情報を共有し、緊急時の連絡方法を決めておく

また、重要な書類のコピーを作成し、原本と別の場所で保管するのも有効です。家族が突然調査を始める必要が出た場合でも、手元に情報がそろっていれば安心です。

まとめ：財産調査は家族の安心と円満な相続のための第一歩

財産調査は、家族のための大切な準備です。全体像を把握し、必要な手続きを早めに進めることで、安心して老後や相続を迎えることができます。家庭ごとに状況は異なりますが、早めの行動が家族の負担軽減にもつながります。今からできることを一つずつ始め、家族みんなで話し合いながら準備を進めていきましょう。